トップインタビュー 流通設計21 3月号
   
   

概要
■本社:岐阜県大垣市田口町1
■設立:1946年11月
■資本金:424億8159万7426円
■社員数:2万5800人
■売上高 4275億2000万円(2006年3月期連結)

「原点」に帰り、新たな挑戦へ題
事業成した人間の真実を痛感
「輸送の予約」で便宜提供
改革続け、輸送立国へ貢献
顧客への情報提供に意義

◆「原点」に帰り、新たな挑戦へ
―「躍動」「自立」と続いたセイノーグループのスローガンに、今年は「原点」を掲げた。

田口
 原点のベースは、祖父・田口名誉会長が残した労使協調体制、礼節中心主義、福寿草精神に凝縮されている。西濃のDNAである「挑戦」、「人間尊重」がその根幹をなしている。人間尊重の考えは、西濃が置かれた環境がいかに変わろうとも、また、会社としての個々の事業への志向・取り組みが移り変わろうとも、外すことはしない。この原点を改めて胸に刻み、これからも大切に守りたい。新入社員にも人間尊重の揺るがぬ姿勢を話している。


―社長からの重要なメッセージだ。


田口
 最高のサービスを提供し、輸送立国に貢献しようという熱意、そこで得られる生きがいが大切だ。共鳴してくれる人材の集団でありたい。理想を追求する仲間をつくることが創業以来の理念につながる。


―「原点」のスローガンは田口名誉会長生誕100周年と軌を一にしている。


田口
 田口名誉会長の言葉にこめられる大事な意味を全員で確認できる良い機会と考えた。その意義を理解し、「原点回帰」を打ち出した。創業時の精神に帰り、DNAがいかなるものかを改めて見つめ直す。どのように行動に移せば原点に照らしてふさわしいかを考えたい。
 
◆事業成した人間の真実を痛感
―田口名誉会長が亡くなったのは社長が大学2年生の時だった。

田口
 西濃運輸に入りビジネスを通して直接学ぶ機会はなかった。しかし、経営者としての判断を教わった。「物を大切にしなさい」「どのような苦労があって、今ここにいるのか」を食事時にいろいろ聞かされた。今もそらんじて言えるほど、頭に入っている。よくかわいがられた思い出が多い。そばにいて、生き方を学んだ。最期は、モノを創造し事業を成した人間の生きざま、真実の姿を痛切に感じ取った。


―どのような時に。


田口
 亡くなる1年前に肺を手術した。自宅に戻ってから、何度も「これで大丈夫だ」と繰り返し話をして、私もほっとした。その後も元気そうだった。しかし、亡くなった直後に父・田口利夫代表に聞いてびっくりした。肺を手術で切り取って、とてもしゃべることはできる状態ではなかった。


―生命力で言葉を発していた。


田口
 気持ちによって、人間はどれだけでも変わっていけるものだと痛感した。人間の奥深くにある、思いの塊が不可能を可能に変えたとしみじみと思う。持っている気持ちが、前に突き進む絶対的なエネルギーになっていた。見た目に、ものすごく大きかったのも、そのエネルギーの威力。風邪を引いた時には力がしぼみ、体が60%収縮したように感じたこともあった。普段の姿が偉大だった証しだった。


―社長に就いてからもしばしば思い出すことも。


田口
 OBから名誉会長の当時の決断がどのようなものだったかをうかがい、「そうだったのか」と納得することがある。聞かされた話にはこういう意味があったのかと分かるようになった。


―知らず知らず薫陶(くんとう) を受けてきた。


田口
 人間尊重と挑戦によって企業としての付加価値を育んできた歴史がある。同時に、名誉会長も父・田口代表も縁あって出会った人たちに大変恵まれていたと、今振り返って思う。
 
◆「輸送の予約」で便宜提供
―田口社長も先人や先輩の方々の志を引き継ぎ、自ら構想した「時間と氣持ち」を前面に出す物流サービスをふ化させようとしている。

田口
 この2つに収れんできる。時間でいえば、鮮度が一番。お客さまにとって時間は命。西濃の付加価値サービスの根幹になる。例えば配達予測時間を伝えることで、お客さまは自社で無駄なく時間を正確に組んで工程の段取りが作れる。工程の効率を高めるサービスだ。さらに輸送の予約時間を設定する概念も、こちらから作り出すこともできる。


―荷主の貴重な時間をつくるサポート役に。


田口
 これまでの混載輸送では電車のように座席(場所)は決まっていなかった。予約がないため、いつどの顧客からどのくらいの荷物をいただくのか分からない。「ユニットロードシステム」では、予約をしてもらえれば、事前に効率的な運行を組むことができ、お値打ちな運賃も設定できる。荷役時間も短縮する。山手線のように便を増やし、たくさん乗せることが可能になる。ダイヤを提示し、顧客に「第何便」と選んでもらえる。


―平準化が実現し、積み残しもなくなる。


田口
 旅客輸送で実践している先例がある。これをトラック輸送でも適応させようという狙いだ。JITボックスも同じ発想だ。お客さまの出荷に費やす時間が短縮され、料金も貸切で運ぶよりもずっと安い。業務効率の改善で大きな効果を提供している。評価は高い。
 
◆改革続け、輸送立国へ貢献
―日本の物流の仕組みを変える改革を目指している。

田口
 片道輸送の「帰り便はないか。安くても運べればよい」との考えでは自らの首を締めてしまう。無駄なく効率を高め、時間を有効に生かせる仕組みをさらに広げていく。


―輸送で国家に貢献する輸送立国への使命か。外資の企業に対抗する施策にもみえる。


田口
 日本のロジスティクスには今後、外国からの参入も十分に考えられる。働く社員として外国人を雇用する動きも同時に出現するかもしれない。日本人自身が運営する会社と外資企業がコントロールする会社では、やり方が異なってくる可能性もある。安価な賃金で外国人を雇い、日本で物流事業を興せば、社会が経験したことのない混乱も考えられる。


―新たな輸送インフラをつくるためにほかの事業者との提携は。


田口
 ヤマト運輸とはJITボックスで手を組んだ。お客さまに喜んでいただける輸送を実現する目的で提携できるようならほかでも実施していく。


―田口名誉会長のころには地域会社を買って「統治すれども君臨せず」の考えで事業を進めてきた。買収していく方策は。


田口
 事業の中身を充実させることを最優先したい。例えば、先般日本梱包運輸倉庫と、互いの強みを生かした相乗効果を目的に、共同出資会社を設立した。この方法を今後の提携のイメージとして強く描いている。専門の事業で培ってきたノウハウを結びつけることを考えたい。


―予約制を導入した新輸送商品の計画は。


田口
 07年度中に間に合わせたい。実際には、お客さまの要望はそこまでは十分にいっていない。安定し、なおかつ適正なサービスとしてぜひ理解を広げたい。
 
◆顧客への情報提供に意義
―「氣持ち」をどう提供していくか。

田口
 輸送事業で、お客さまに感動を与えるために必要なのは、期待されるレベルよりも高いプラスアルファのサービスを実践すること。ベースは、やはり有益な情報の提供にある。いかにきちんと情報を伝えていくかがカギ。「ここまで先を読んで物流サービスを準備し実践します」という気持ちを行動となって表すことが、感動をしていただく決め手だ。素直に物事を聞き、衆智を集めて即行に結びつける姿勢があれば、気持ちは伝わると信じている。


―「時間と氣持ち」を織り込んだ新しい輸送商品は。


田口
 出していく。輸送の周辺業務でいえば、事務作業の軽減、代金回収など情報システムを組み込んだサービスを提供していく。ワンクリックによるサービスも十分可能になってきた。eトランスポーテーションのイメージを実現させる。


―荷主の手間を省くサービスだ。


田口
 ワンクリックでオーダーが出せ、口座からの引き落としまですべて簡略化させる。今、ウェブを使った請求書を出させてもらっている。時間を絶えず意識して短縮化させる狙いを、もっとPRしていきたい。いろいろ構想を練っている最中。実現できるところから実践していく。

―創立70周年となる10年後をどう想定しているか。

田口
 業界ではパイの食い合いはなくなり、共存してやっていこうという意識に完全に変わっていると予測している。少子化の背景もある。互いに補完し合って成長する道を探求する時代だ。その前提に立ちいかにお客さま、社会に貢献できるかを考え、実践につなげていく。輸送立国への想いはまったく変わらない。
(谷 篤)
 

     

Top